今回は、米国株投資を考える上で知っておきたいことをまとめていきます。
今回のテーマは「株主に対する意識の差」というテーマでお伝えしてきます。
- 結論から言えば、日本企業の特徴として「会社は経営者、社員のもの」という意識が強く、一方でアメリカ企業は会社は「株主のもの」という意識が強いです。
そのため、株式投資をする上ではやはり、株主を優先するというアメリカ企業に投資したほうが恩恵を受けやすいといえます。
では、その理由を2つに分けてわかりやすく解説していきます。
- 経営者の意識の差
- 株主還元の意識の差
投資に対しての注意事項…(クリックで下に詳細を表示します)
この記事は私が投資している銘柄を中心に主要指数・セクター別の動きなどをまとめていきます。主に私が投資しているのはハイテクグロース株でありFANG+銘柄とNASDAQ100になります。レバレッジ型の投資やハイテクグロース株には元本を大きく損なうリスクも有るためご注意ください。投資に対してはリスクを許容した上で投資してください。本記事・ブログにおいての個別銘柄・投資信託・ETFなどについては売買を推奨するものではありませんので予めご理解の上、お読みください。本ブログに掲載された銘柄において損失を被った場合においても責任は一切負いません。
(初回公開日時:2021年11月22日)
経営者の意識の差
まず大きく違ってくるのは、「経営者の意識の差」です。
アメリカ企業の場合も日本企業の場合も上場企業となると創業者は減ってきていわゆる「雇われ社長」が年数が経つと増えてきます。
雇われ社長というのは、いわゆるサラリーマンのようなもので社長ではあるものの創業者やその一族ではない人が社長になっていることです。
当然創業者の場合は、会社の株は多く持っており株価を上げることは自分の資産を増やすことにリンクします。
一方で雇われ社長の場合は、あくまでもサラリーマンの延長のようなもので創業者のように多くの株を保有しているわけではありません。
当然、ストックオプション制度のように毎月自社株を積み立てて購入・付与されている場合もありますがたかが知れています。
アメリカ企業の経営者はまずは自社株を大量に買う
JPモルガン・チェースのジェイミー・ダイモン
アメリカ企業で新しく就任した社長(CEO)はその会社の株をポケットマネーで購入します。
有名なのは、JPモルガン・チェースのジェイミー・ダイモン氏です。
2005年CEOに就任し就任時にJPモルガン・チェースの株を購入しており、2009年に354万株、2016年には675万株と自社の株を毎年のように購入しています。
50万株ずつくらい買ってるよねw
自社の株を買うっていうのはそれほど自社と自分の腕に自信があるんだろうね
2020年の報酬は3150万ドル(34億円)と報道されています。*1
アメリカでは、社長が自社株を買うことは、自信の現れとみなされる傾向があり会社の株価(業績)を会社にコミットしているという点でいい評価を得られています。
ダウケミカルのジム・フィッタリング
同様にダウケミカルのジム・フィッタリングも同様にCEO就任時に2万株を購入。(現在は社名が変わり、ダウとなっています)
アップルのティム・クック
アップルのティム・クックCEOはスティーブ・ジョブズから社長を受け継いでおり、就任10年後に自社株を500万株受け取るという契約を結んでいました。
ブルームバーグによれば、報酬額は時価ですが7億5000万ドル(826億円分)と言われています。
報酬やばすぎw
ティム・クックが就任してアップルの株価は1,100%も上がってるし有能すぎるでしょ
報酬とは別にティム・クックは、15億ドル(1600億円分)のアップル株を持っていることもわかっています。
マイクロソフトのナデラ
マイクロソフトのインド系のCEOであるナデラ氏も同社の株式を大量に保有しています。 一部売却などもしていますが、77万株以上を保有しています。
ナデラも相当有能だからね、マイクロソフトの株価はうなぎのぼりだもんね
マイクロソフトの場合、創業者のビルゲイツが多くの株を保有しているのは当然ですが、2013年にCEOに辞任したスティーブ・バルマーは20億ドル分(2000億円)のマイクロソフト株を保有していました。
経営者が自社株を保有していることは、自身の資産の増加を意味し、株主と一蓮托生の意味もあります。
よって、株主からは「信用」されます。
日本の経営者に対する株式の保有への批判
一方で、日本企業の場合大々的にインサイダーの株主保有は歓迎されません。 (インサイダーは悪い意味ではなく、内部関係者という意味)
それは、
- 「本業ではなく株で儲けようとしている!」
- 「副業にうつつを抜かしている」
という風潮があり批判の対象になりやすいと言われているからです。
ソフトバンクの孫社長やユニクロ(ファーストリテイリング)の柳井社長に関しては創業者ということもありますが、保有株の自社株のおかげで資産を大きく伸ばしています。
数字にもあらわれているのですが、日本の役員・経営者が保有している株式が0.6%に対して、アメリカはその3倍の1.85%も自社株を保有しています。
会社は誰のものであるのかというのは、日本とアメリカには大きな差は数字以上に現れない「自信」という点では大きな差を感じてしまいます。
株主還元の意識の差
次に、株主に対しての意識の差という点で「株主に還元する」という意識が日本株とアメリカ株ではあります。
日本企業も多くは配当や優待などを出して株主を大切にしているという風潮が出来上がりつつありますが、アメリカ株にはまだまだ及びません。
S&P500に採用されているアメリカ株の配当と純利益は、東証一部上場企業の4倍に当たります。
また株価を大きく上げる「自社株買い」に至っては、10倍以上になります。
自社株買いというのは、発行されている株を自社が買うことによって、株価を上げることに繋がります。
株価をあげることは、先程伝えた経営者や株主にとっては大きなインセンティブになります。
株価があがることで、株主は株を保有しつづけるという好循環が生まれます。
自社株買いというのは、他にもメッセージが有り「自社株が市場で過小評価されている」という会社から市場へのメッセージになります。
キャピタルゲインとインカムゲイン
またアメリカ株の場合配当(インカムゲイン)にかかる税金よりも、株を売った際の売却益(キャピタルゲイン)のやすいということもあり自社株買いが好まれています。
また税金がインカムゲインとキャピタルゲインの場合同じだとしても、配当を受け取った時点で税金がかかるため、自社株買いをして株価を上げてくれたほうが価値が高いとみなされます。
米国企業も1980年代くらいまでは、自社株買いの5倍ほど配当をだしていましたが、1990年代には、自社株買いが配当額を上回るようになっています。
企業の株価に対する考え方の変化もあっていいよね、いい方向に向いてる
日本企業の場合は一生おんなじことしてるってイメージだもんね
企業も日米の家計簿と同じ
日本人とアメリカ人では家計に対する金融資産の割合が3倍以上違っています。
家計に対する記事については、別の記事で詳しく書いていますのでよかったらそっちを読んでね
日本企業の場合、損益計算書を重視しする一方でバランスシート(資産と負債)をおろそかにしがちです。
預貯金を貯めすぎることで国民や政治家から無駄に批判されることが度々あります。
内部留保がどうのこうのってやるだね
一方でアメリカ企業の場合は、現金ではお金を貯めておらず、資金が少しでも余っていれば自社株買いや配当を通じて株主に利益を還元して効率的なバランスシートに整えています。
これも数字で見ると明らかで、2019年アメリカの代表的な企業500社のS&P500の企業の純利益は1.1兆ドル(115兆円)に対して、配当は5200億ドル(55兆円)、自社株買いは1.25兆ドル(130兆円)になっています。
純利益を上回る自社株買いw
それだけ株主に対する還元率が高いってことだね
一方の東証一部上場企業は2019年約30兆円の純利益でした。
13兆円の配当と、7兆円の自社株買いを行っています。
アメリカ企業の自社株買いと配当の比率は、4:6となっており、日本企業の場合は6.5:3.5となっています。
ここでも配当と自社株買いの意識の差がでてるよね
さらに配当利率でいうと、アメリカ企業は
- 配当利回り:1.9%
- 自社株買い利回り:2.6%
合計:4.5%の株主還元利回りでした。
日本企業は、
- 配当利回り:2.2%
- 自社株買い利回り:1.2%
合計:3.4%の株主還元利回りです。
こうした自社株買いの意識の差によってさらに大きな差が生まれてくるのは指数に対する寄与です。
配当は株主に対してのみ支払われますが、自社株買いは株価を上昇させます。
株価が上昇することで、S&P指数やダウ平均株価、NASDAQ総合指数などの所属する指数も上昇していきます。
指数に対して投資しているインデックスファンドやインデックス投資家も多くの恩恵を受けているのは自社株買いの支えがあるからとも言えます。
自社株買いの企業が少ない日本株の日経平均はいまだにバブルの高値を超えられないボックス相場をいまだに形成していますが、アメリカのS&P500は右肩上がりの成長を見せています。
株主と企業が一体となり市場に資金を入れ、その資金を効率的に活用し企業の価値を上げていくの米国株なのです。
配当も魅力な米国株
自社株買いが株主に与える恩恵が大きいのは説明し、その意識の差はアメリカ企業に軍配があがることも説明してきました。
一方で、米国株は「配当」も非常に魅力です。
私は現在は配当株に対してそこまで投資していませんが、米国株投資の魅力として高配当だからという人も多くいます。
高配当投資として、アメリカ企業は圧倒的なのは増配年数です。
配当王、配当貴族と言われる企業がゴロゴロあるのに比べて、30年間増配をしている日本企業は花王1社であり、20年以上の増配をしている企業も5社程度しかありません。
アメリカ企業の場合は、
- 60年間増配を続けている企業は9社(3MやP&Gなど)
- 50年以上は18社(コカ・コーラやジョンソン&ジョンソン)
- 40年間以上になると35社(マクドナルドなど)
になります。
100社以上が20年間増配を続けています。
配当の増額「増配」は株主に対しての還元の方法の一つで配当を毎年増やし続けていることで株主に対してコミットしているのです。
増配年数でも大きく負けて、自社株買い利回りでも圧倒的に負けて 日本株って…
勝ち目ないよね
まとめ
今回は、私が日本株ではなくアメリカ株に投資する理由のひとつである「株主に対しての意識の差」というテーマでお伝えしてきました。
もちろん、日本株にも素晴らしい企業はたくさんあり自社株買いを積極的に行う企業や、経営者が自社株を大量保有している企業はあります。
相対的にみて、そういった企業に投資するのであれば数字が示しているように米国株に投資したほうが恩恵を受けやすいはずです。
それは、全体の指数を見ても明らかです。 とはいえ、日本人で日本に住んでいる以上ホームマーケットバイアスにかかってしまい、日本株に投資してしまうという「失敗」をしてしまいます。
(私もそうでした) 米国株に簡単に投資できる環境がある今はしっかりとデータをみて、どちらが恩恵が大きいのかを考えて投資をしましょう。
参考にした書籍
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*1:JPモルガン取締役会、ダイモンCEOに株式増加受益権を付与